「料理長になってからがプロとしてのスタート」銀座朔月 料理長 大網幸治氏インタビュー~前編~

銀座朔月 大網さん
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銀座の並木通り沿いに店舗をかまえる和食鉄板「朔月」。

料理長の大網幸治氏は、大阪あべの辻調理師専門学校を卒業後、料理人として割烹、料亭、ホテルなどで16年の修業を積み、代官山「萬葉庭」で料理長を経験したのち、現在のお店に立ち上げから携わっている。

「料理人は料理長になってからがスタートですよ」と語る大網氏に、料理人としての成長の過程や料理長になった経緯、飲食業界でキャリアを積むための心がけについてお話をうかがった。

大網幸治氏インタビューの後編はコチラ!
>>>【噂のあの店】銀座✕バリアフリーの経営術 銀座朔月 大綱幸治氏インタビュー~後編~

運送業から料理人の世界へ

銀座朔月 大網さん
ーーー料理人になったきっかけを教えてください

家庭の事情で子供の頃から家族のために料理を作っていたので、料理は好きでしたね。

高校卒業後は運送の仕事をしましたが、そっちは自分に合わなくて、料理人の道を考えるようになりました。

料理人になろうと決めたきっかけは、けっこう些細なことです。

テレビで老舗料亭のドキュメンタリー番組を見ていたら、若い板前さんが朝から晩まで怒鳴られて、かけずりまわって修行をしていて、その姿をみたら「俺だってやってやる」と思いました。もともと、負けん気の強い性格ですから。

当時は、バブル景気で若いやつはみんな浮かれていたけど、自分は親に甘えている奴が嫌いなので、あえて料理人の厳しい縦社会に身を置いて自分を鍛えようと考えました。やるんなら一番厳しい環境で自分を試してやろうと。

ーーー厳しいからこそ、料理人の世界に飛び込んだのですか。最初から和食をやろうと考えていたのですか?

住み込みのアルバイトをしながら進学して、大阪の調理師専門学校に行って、最初に入ったお店が和食だったので、それ以来は割烹や料亭やホテルで16年ほど修行をしました。

自分に限らず、和食の世界というのは負けず嫌いなやつが多いです。

若いときに自分が働いていた赤坂あたりには、割烹や料亭がたくさんあって、自分と同じくらいの若い衆もたくさんいたので、ライバル意識もありました。

30代半ばまでは親方について回りましたが、親方の下で2番手を続けるのではなく、「料理長になりたい」と思って離れました。

親方の元を離れてからは苦労もありましたが、30代後半に代官山の『萬葉庭』で料理長になりました。

ーーー料理長の仕事を任されて、戸惑うことや悩むことはありましたか?

無いといえば嘘になりますが、当時は気合が入ってましたし、料理長を任されたらやるしかないです。

ハードル高めのところにいったほうが自分も成長します。低いハードルでぬくぬくしていたら、いつまでも給料は上がらない。

料理人はどんどん上を目指していくべきだし、上に行きたいのなら意識を変えないとダメです。

負けたくないから工夫をした

銀座朔月 大網さん
ーーー大網さんは修行時代に、どんなことを考えて仕事をしていましたか?

常に真剣に取り組むことが近道ですが、それだけでなく、自分なりの工夫をした方がいいです。

和食は負けん気の強い奴が集まっているから、朝は桂剥きの練習してるとか、夜は1時間ノートつけているとか、努力しているやつはたくさんいました。

けど、自分は麻雀もしたいし、遊ばないと生きていけない性格なので(笑)

仕事のやり方を工夫して、同じ時間で周りが10のことを覚えるなら自分は13のことを覚えようとしていましたね。今まで1時間かかっていることを50分で終わらせる方法を考えたり、そういう工夫をして仕事をしました。

そうやって仕事の効率をあげて、人より多くのことを覚えていけば、成長できることも多いし、自分の時間をもつこともできるんですよ。

どんな仕事でも、だらだらやるのではなく効率よく働く工夫をした方がいい。

それを1年、5年、10年と続けていくと、周りと大きな差ができます。大事なのは継続することです。

チャンスを手に入れる方法

銀座朔月
(黒を基調とした和テイスト店内には、季節の花や書が飾られていた)

ーーー飲食業界で給料を上げたり、チャンスを掴んだりするためにはどうすればいいでしょうか?

料理人の仕事って野球選手と一緒です。

野球選手は先に給料の交渉をして、それで成績が悪かったら解雇じゃないですか。

だから、料理人が「これだけのことをやりますから、給料はこれくらいください」って交渉をしたのに、親方や経営者から求められていることができなかったらクビになって当然です。

できない理由について、例えば「時間がありません」「やったことがありません」「人がいません」「道具がありません」とかいくらでもありますけど、できない理由を言っている間はやろうとしてないんです。

「どうやって期待に応えるか?」「どうやったらできるのか?」だけでなく、「期待以上のことをやってびっくりさせてやろう」と考えていたら、できない理由は言いません。

ーーー「できない理由を言っている間はやろうとしていない」ですか。それはどんな仕事にも言えることですね。

仕事を評価されるためには、求められていること以上のことをやらないと。そのあたりの意識は若い時からもっておいた方がいい。

たとえば、親方に「竹が欲しい」と言われたら、朝5時に起きて実家のトラックに竹を積んで東京に運んだりしましたよ。

若いなりに「こんなの持っていったら親方は喜ぶだろう」と考えて仕事していました。。

そうやって、求められる以上のことをやるから「あいつ、がんばってるな」「給料上げてやろうか」「上に引っ張ってやろうか」と思ってもらえたし、親方や経営者の気持を考えて、それに応えようとすればチャンスがやってきます。

ここで逃げたらどこに行っても同じ

銀座朔月 大網さん
ーーーこの仕事を続けるかどうか迷ったときはどうしたらいいでしょうか?

私も迷うこともありますよ。迷ったときにどうするかは自分の考え方次第ですけど、ひとつのことをちゃんとできない人はどの業界でも同じです。

今の職場や業界から逃げても、どこに行っても同じでしょう。

ありきたりかもしれませんが、飲食の仕事を続けるか迷っているなら、まずは3年続けたほうがいい。

数ヶ月や1年くらいで、その業界を判断できるはずがない。

あと、「辞める」という結論を出す前に、上司に相談した方がいいでしょう。

辞めたい理由には思い込みがあるかもしれないので、上司の思っていることと、自分が思っていることを一度話し合ったほうがいい。

仕事が多かったり厳しく言われたりするのは、実は期待されているのかもしれないですよ。

「料理長」になってからがスタート


(「どんなひとも食事を楽めるバリアフリーの店」というコンセプトから朔月は始まった)

ーーー飲食業界で働く若い人へのメッセージをお願いします。

良い料理人とは「お店を流行らせることができる料理人」です。

そういう料理人になるためには、料理長にならなければ始まりません。

上手にお刺身をひいたり、すごい美味しい懐石を作れるとしても、評価をされるには料理長になってお店を繁盛させなければダメなんです。

たとえ、ひとりの料理人として頑張って料理をつくっても、評価されるのは料理長ですからね。

若いときは技術を覚えようと焦るでしょうが、同じ年くらいの料理人と比べて、自分には才能があるとか無いとかは気にしなくていいんです。料理人としての才能と料理長として必要な才能は別物です。

もしかしたら、料理長になってから思わぬ才能が開花するかもしれない。

だから料理長になってからがプロとしてスタートです。料理長になってお店を任されてから、私はそう実感しました。

そして、この業界を辞めてしまうと、やってきたことはすべてゼロになります。
料理長になってスタートラインに立つまでは、なによりも継続することが大事なことだと思いますよ。

「誰かを喜ばせたい」が原点

銀座朔月 大網さんーーー大網さんが料理人を続けてこられた理由はなんでしょうか?

飲食業というのは労働時間は長いし、給料は安いし、ストレスもかかる仕事です。

社会的な評価も高いとはいえません。それでも、私がこの仕事を続けることができたのは「だれかを喜ばせるのが好き」だからですね。

「だれか」というのは、お客さんはもちろんですが、上司であり、経営者であり、従業員であり、自分の家族でもあります。そのだれかが喜んでいる姿を見ると自分も嬉しい、それが基本にあります。

その喜びがあるから長い時間をかけて修行をしてきたし、和食の世界に身を置いて30年、今もこの仕事を続けています。

食べるってことは、人を幸せにできる一番身近な行為です。

料理人として、その幸せに直接携わることができるのはすごく良い仕事だと思ってますよ。

>>>銀座朔月のHPを見る

<編集後記>
インタビューを始める直前に「ちょっと失礼」と席を立って、常連のお客さんに挨拶をしている様子が印象に残った。かしこまった挨拶ではなく、親しげでリラックスした会話をしているように見えたからだ。取材中も「オープン当初から応援してくださるお客さんもいる。うちはお客さんに恵まれてるんですよ」と語る時の大網さんの表情は、自分の家族のことを語るように穏やかだった。

しかし、料理人としての仕事について質問をすると表情は変わった。「ハードルは高いほうが成長できる」「できない理由を言っている間はやろうとしてない」「辞めたらゼロ。なによりも継続することが大事」という言葉は、どんな仕事にも通じる仕事論でもある。経験に裏付けられた力強い言葉を頂いて、「喝!」を入れられたような気持ちになりながら、大網さんの言葉をノートに書き留めた取材だった。

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飲食のお仕事レシピ 編集部

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